ロギノリシブは、PI3Kδ末端のヘリックスを安定化して阻害する
結晶構造ではkα12は見えず、MDとHDX-MSでイデラリシブとの違いが現れた
Proteins & Nucleic Acids
- p110δ(触媒サブユニット)Phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate 3-kinase catalytic subunit delta isoform
- p85α(調節サブユニット)Phosphatidylinositol 3-kinase regulatory subunit alpha
Ligands
- ロギノリシブ
QGU[6-fluoranyl-1-[4-(morpholin-4-ylmethyl)phenyl]-5,5-bis(oxidanylidene)-4H-thiochromeno[4,3-c]pyrazol-3-yl]-morpholin-4-yl-methanone
- 疑問・課題
- PI3Kのアイソフォームは触媒部位が似ていて選択的に阻害しにくく、ロギノリシブの結合様式がイデラリシブと違うかが課題だった。
- アプローチ
- ロギノリシブとの結晶構造(2.75 Å)に、分子動力学(MD)と水素重水素交換質量分析(HDX-MS)を組み合わせた。
- 結果
- 結晶ではkα12の電子密度が得られなかった。HDX-MSでkα12が交換から守られたのは、ロギノリシブ結合時だけだった。
- わかったこと
- ロギノリシブはkα12の塩基性残基との相互作用で不活性型を安定化し、δ型への選択性にも関わると著者は考えている。
- 残された課題
- 結晶構造ではkα12の電子密度が得られず、その姿はAlphaFoldモデルに基づくMDとHDX-MSから推定している。
Highlights
ロギノリシブは、ヒンジのVal828と水素結合し、Trp760とπ-π相互作用する。イデラリシブが使う特異性ポケットには入らず、DFGモチーフのAsp911は約90°違う向きになる。
“The binding of roginolisib pushes Asp911 into a DFG-in-like configuration. By contrast, idelalisib leaves the residue in a rotated (by 90°) orientation resembling the DFG-out aspartate conformation.”Results
MDでは、ロギノリシブ結合時だけkα12が活性部位側へ倒れ、HDX-MSでもkα12が交換から守られた。p85αのcSH2による阻害を外したY685A変異体では守られず、不活性な酵素を選んで結合するとみられる。
“The situation differs for roginolisib, where protection of the kα12 helix (1022–1044) was only seen for the WT enzyme (Figs. 4a, 5d).”Results
CLL患者の細胞をex vivoで処理すると、ロギノリシブは高用量・2時間でイデラリシブよりPIP3を下げた。ただし解析した患者数は3〜5人と少ない。
“Data are shown as individual patient values, with each symbol representing a single patient (a, b: n = 5; c, d: n = 4; e, f: n = 3).”Figure legends
Lab Notes
- 発現系
- ヒトp110δ(1–1044)とウシp85(431–600)を、別々のウイルスでSf9細胞に共発現(26℃、感染48時間後に回収)。
- コンストラクト
- p110δはN末端に切断可能なHisタグ付き、p85はタグなし。
- 精製
- Ni Sepharose HPで捕捉 → TEVプロテアーゼでHisタグを除去 → Superdex 200 26/60(Tris/NaCl/DTT)。
- 結晶化/グリッド作製
- 5 mg/mLのタンパク質に化合物(10 mM DMSO)を加え、12–14% PEG 6000・MES/NaOH pH 5.75のハンギングドロップ蒸気拡散(20℃)。2〜3日で結晶化。
- データ収集・解析
- Swiss Light Source、100 K。autoPROC/AIMLESSで処理し、PDB 6PYRを探索モデルに分子置換、BUSTERで精密化。