MERS-CoVスパイクの活性化を、時間を追って捉えた
受容体DPP4と1〜120時間反応させ、融合後のS2を3.23 Åで解析した
Proteins & Nucleic Acids
- MERS-CoV スパイク(S)Spike glycoprotein
- 疑問・課題
- 受容体結合が膜融合にどう結びつくのかは、構造的に不明だった。
- アプローチ
- スパイクとDPP4を一定時間反応させ、各時点の構造をクライオ電顕で決めた。
- 結果
- RBDが開くほどS1–S2の結びつきが弱まり、融合後のS2構造も得られた。
- わかったこと
- MERS-CoVのスパイクはSARS-CoV-2より柔軟で、融合が起こりやすい性質と整合する。
- 残された課題
- SARS-CoV-2で報告された初期の融合中間体は今回見えなかったが、MERS-CoVでの存在は否定できない。
Highlights
反応時間を変えた試料を並べるだけで、受容体結合後の状態の分布が時間とともに移る様子を捉えた。24時間では1-up約25%・2-up約40%・3-up約28%、72時間では3-upは検出されず融合後型が約24%になった。
“The 3-up state was no longer detected.”Results
3-down状態に比べ3-up状態ではS1とS2の埋もれ表面積が6518.3 Ųから5293.8 Ųに減る。S2コアのHR1-CH領域も2つのDPP4が結合すると4.2 Å外側にずれ、SARS-CoV-2にはこの動きがほとんどない。
“the HR1-CH region was displaced by 4.2 Å relative to the 3-down conformation”Results
融合後S2(3.23 Å)では、HR2の上流リンカーがSD3とのβシートを離れ、隣のプロトマーの溝に沿う伸びた構造に再編される。著者は広域の融合阻害剤や中和抗体の標的候補とするが、これは構造からの推測である。
“In the pre-fusion state, a β-strand from this linker forms a β-sheet with the SD3 domain, stabilizing it in a folded conformation adjacent to SD3.”Results
Lab Notes
- 発現系
- HEK293Fにポリエチレンイミンで一過性発現、72時間後に上清を回収。
- コンストラクト
- MERS-CoVスパイク外部ドメイン(残基1–1,291)、N末gp67シグナル、C末T4フィブリチンと6×His。
- 精製
- Ni-Sepharose、Superose 6 Increase 10/300(20 mM Tris、200 mM NaCl、pH 8.0)。
- 結晶化/グリッド作製
- スパイク0.7 mg/mLとDPP4 1.5 mg/mLをモル比1:1.1で25 °C、所定時間インキュベート。グリッドに3 µL、Vitrobot IV。
- データ収集・解析
- Titan Krios G4(Falcon 4i、Selectris)、RelionとcryoSPARC v4.4.1。
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